極秘リビア説得工作が奏功…クロマグロ禁輸否決 (2010年3月20日01時29分 読売新聞) 大西洋クロマグロの禁輸が最大のテーマとなったワシントン条約の締約国会議は、予想外の大差でモナコや欧州連合(EU)の禁輸提案を否決し、「ドーハの悲劇」は回避された。 予想外の日本圧勝の裏には、途上国を中心に欧米主導の禁輸案への反発のうねりと、日本政府の周到な準備があった。 ◆極秘訪問 否決の流れを作ったのはリビアだった。18日の第1委員会では、リビアの代表が同国の最高指導者カダフィ氏ばりに、「(マグロの国際取引禁止は)先進国による陰謀だ!」と声高に主張し、途上国の反欧米の心情に訴えた。さらに、議論の打ち切りと即時採決を提案し、急転直下、否決へとつながった。 実は今年2月末、水産庁の宮原正典審議官が極秘裏にリビアを訪問し、締約国会議でのクロマグロ禁輸反対に支持を求めていた。日本の説得工作で、当初関心が低かったリビアから、最終的には「日本支持」の言質を引き出すのに成功した。 国際会議では途上国と先進国の対立がしばしば表面化する。いつもは途上国と利害を異にする日本が周到な準備を進め、今回はうまく途上国の欧米主導に対する不満をすくい上げ、“反欧米”と言えるうねりを引き出せたことが、大事な局面で奏功した。 ◆中・韓とも連携 今回の会議では、サメ類の商業取引を制限する案も提案されている。中国が、漁業規制の波がクロマグロからサメ類などに飛び火し、フカヒレなどの貴重な食材の確保に影響が出ることを懸念し、日本と共同歩調をとった点も大きい。 委員会採決で、漁業国のアイスランドが秘密投票を求め、認められたことも日本にとっては有利に働いた。禁輸反対派のアイスランドはEUへの加盟交渉中だ。 新興国や中国、韓国との連携や、欧州内の足並みの乱れを確認し、事前の劣勢との見方が一変。日本政府は次第に否決に自信を深めていた。 「いまなら勝てそうです」 赤松農相のもとに、17日、ドーハの町田勝弘水産庁長官から電話報告が入ると、赤松農相は「勝てるなら一気呵成(かせい)にやろう」と、即日採決で否決に持ち込もうとするアラブ諸国に乗る腹を固めた。 「モナコ大敗」。農林水産省内の対策室に、マグロ禁輸案否決を伝える現地・ドーハから電話が鳴ったのは、マグロ禁輸の議論初日の18日深夜だった。 (ドーハ 是枝智、実森出、カイロ 福島利之) EU「環境外交」連敗…クロマグロ禁輸否決 (2010年3月20日00時38分 読売新聞) 大西洋クロマグロの国際取引規制を協議したワシントン条約締約国会議で18日、欧州連合(EU)の禁輸提案が否決されたのは、環境保護を看板政策に掲げるEUにとっては手痛い敗北となった。 環境政策で経済的打撃を被る当事者の「実利の壁」を乗り越えられなかった格好で、EU内では理念先行型の戦略に見直しを迫る声が強まりそうだ。 EUの執行機関、欧州委員会は18日、環境政策と漁業担当の両委員による連名の声明を発表。「EU提案に関する投票結果を残念に思う」と失望感を隠さなかった。 締約国会議では、来週の本会議での再投票で巻き返しを図る道もあったが、EUは早々に提案採択断念の方針を固めた。加盟国の中で、取引禁止への漁民の反発を抱えるフランスやスペインなどが消極的な姿勢に終始したためだ。加盟国間の利害が異なる問題では外交力を発揮できないEUの構造的なもろさを露呈した格好だ。 EUでは、「禁輸しなければクロマグロは数年で消滅する。スシも食べられない。日本は(禁輸否決で)自分で自分の首を絞めたのだ」(バス・エイクハウト欧州議員=オランダ「緑の党」所属)など、日本が資源保護を顧みずに短期的利益の確保に走っているとの批判が根強い。だが、18日の採決の結果については、「日本の実利外交に敗れた」との意見も高まっている。 19日付英紙フィナンシャル・タイムズは、クロマグロの禁輸否決が、EUにとっては昨年の気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)に続く2連敗にあたるとし、「欧州は国際的影響力について自己分析を迫られている」と指摘した。 COP15では、EUは先進国でも急進的な温室効果ガス削減の枠組みを主張したが、国内産業への打撃を警戒する米国や中国に阻まれた形となった。EUはその後、気候変動対策では、再生エネルギー産業の振興や資源コストの削減など「実利」を強調する姿勢が顕著になっている。 クロマグロをめぐっても、欧州委員会はあくまで、資源量減少の「科学的データ」を根拠に、EU単独でも取引規制に踏み切るべきだとの立場だ。しかし、肝心の加盟各国が実利優先を鮮明にする中では、この姿勢も後退を余儀なくさせられる可能性は十分ある。 【ブリュッセル=尾関航也】 |
文化vs産業vs環境vs南北問題、というところか。
日本の政府が一連の動きの中で、何も言わず水面下で事を動かしていた事が功を奏したのならば、皮肉な事だ。
沈黙は金。

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